海のしごと Work in a sea/渡邉和寛 Kazuhiro Watanabe

船乗りの背中を見て育った。

私は広島県呉市の沖合に浮かぶ下蒲刈島(しもかまがりじま)で生まれ幼年期まで育ちました。この島で祖父と祖母が創業したのが今の会社です。幼年期に島を出てしまいましたが、正月に船が呉に戻ってくるなど、小さいころから船は身近な存在でした。海や船は楽しい遊び場で船員さんたちにもかわいがってもらい、自分はとても恵まれた環境で育ったと、大人になってつくづく実感します。

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外に出てわかった、大切なこと。

父に会社を継げと言われたことは一度もなく、大学卒業後はそのまま東京で商社に就職しました。恵まれた環境で貴重な体験も多くありました。ただ理解できないものにずっと付きまとわれている感覚でした。たぶん、生まれた環境との、流れる時間軸の差が大きかったのだと思います。また船乗りは、船のゆったりした時間の中で生活し時間に追われることが少なく、荒々しい中にも人情に厚く、竹を割ったような性格の人が多いんです。自分に忠実というのでしょうか。嫌いは嫌いと本人の前で言い、好きとも堂々と言う人が多い。結局、私はよんどころない事情と、現場を見ながら泥臭くても人とのつながりを身近に感じられる仕事がいいかなという思いに背中を押され、地元に戻る決心をしました。

何をおいても「人」が一番。

祖父が言う「ええ塩梅でしちゃってくんないよ」って言葉をよく聞いて育ちました。良い加減、裁量を相手に託すんです。がんじがらめのルールの中でも、そんな関係を築きたいなと思っています。

一つ屋根の下に暮らす。

船は、家族のようなものだと思います。一回の乗船は2か月以上になることもあるので、船は職場であって住居でもある。船員は職場の仲間であり、仮の家族だという感覚です。私は主に陸上で仕事をしていますが、可能な限り訪船して船上で働くみんなとコミュニケーションをとったり、船員の普段の生活に埋もれている部分を自分の目でチェックして、早めに対応したりしています。トラブルの未然防止はもちろんですが、誰しも居場所が快適でなければ、良い仕事もリラックスもできません。教えることも、教えを乞うことも、相手の何かを認めているからできることです。船の様子をしっかりと把握して、理解して、整えていくのが私の重要な仕事。時にはきつい一言を受けることもありますが、生活環境と人間環境の良さが結果的に、正確で丁寧で安全な航海・仕事につながるのだと思います。

夢を実現するためのステップにも。

自分のやりたい夢がある人には、夢を実現するまでの期間を決め、その時期が来るまでしっかり濃い時間の中で働いてもらう。働き、稼ぎ、夢への資金を貯め、飲食店の開業でも何でも、第2の人生を体力も気力もあるうちに実現してもらうのもいいなと思っています。もちろん、船員の仕事を一生の仕事としてもらえれば何よりです。だけど、船員の道に新たに入る人達に夢をかなえるためのキッカケとして船員の仕事を選んでもらうというのも一つです。この業界での働き方が柔軟で魅力的なものになればいいなと考えています。

 

有限会社エヴァライン

広島県呉市広弁天橋町3-25 TEL:0823-71-3599

http://www.evahline.jp/

【所有船舶】

だいこく[コンテナ専用船]

竣工2011年9月 / 総トン数749t / 全長95.5m / 全幅13.5m / 主機馬力2,800ps / 速力13.5ノット

新生丸[鋼材船]

竣工2007年4月 / 総トン数499t / 全長74.73m / 全幅12.0m / 主機馬力1,000ps / 速力10.5ノット

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